2025年財務大臣規則第112号(PMK112/2025)における外国納税者(WPLN)の配当に関する租税条約(P3B)適用ルールの新算定方式
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インドネシア政府は、2025年財務大臣規則第112号を通じて、国際的な配当取引における税務スキーム(租税回避)の余地を縮小することを目的とした新たな規定を導入しました。その一つが、特定租税回避防止規定(Specific Anti-Avoidance Rule:SAAR)です。
この規定は、外国納税者(Wajib Pajak Luar Negeri:WPLN)による租税条約(P3B)の濫用(Treaty Abuse)の可能性を対象としており、特に租税条約上の優遇税率を受ける目的で株式保有比率を人工的に操作するスキームへの対策を意図しています。
インドネシアが日本、オランダ、シンガポールなどの相手国と締結した配当に関する多くの租税条約は、二段階税率制度(Dua Tarif)、または一般に分割税率 (Split Rate)/二重税率 (Dual Rate)と呼ばれる制度を採用しています。
この制度では、配当所得に対する源泉徴収税率は株式保有率に大きく依存します。
ポートフォリオ保有の地位にある外国納税者(WPLN)(株式保有割合25%未満)には、より高い税率(例えば15%)が課されます。 一方で、5%や10%といったはるかに低い税率の適用は、WPLNが株式保有割合25%以上であることが証明された場合にのみ認められます。この税率の差(Disparitas tarif)は、WPLNに取引の操作を行う余地を与えます。
保有割合が基準に達していない投資家は、配当支払直前に株式保有割合を人工的に増やして、低い税率の恩恵を受けようとすることがあります。 このような一時的な株式取得は、閾値操作(Threshold Manipulation)の一形態であり、明確に租税条約(P3B)の濫用(Treaty Abuse)として分類されます。
PMK112/2025は、このような抜け穴を防ぐため、適用判断のパラダイムをより包括的なものに変更しました。
これまでは、配当基準日(Record Date)時点の法的な株式保有(Legal Ownership)のみが見られていましたが、
新ルールでは、経済的実態(Substance)と保有期間(Duration)の証明も求められることになりました。
配当に対する租税条約(P3B)税率適用の条件
本規則第20条によれば、租税条約(P3B)においてより低い株式保有税率(配当税率)を適用したいWPLN(外国納税者)は、累積的(階層的)な条件をすべて満たす必要があります。
これには、実質的要件(Substance)、保有割合要件(Quantity)、保有期間要件(Duration)が含まれます。
- 実質的要件
外国納税者(WPLN)は、単なる代理人、名義人(Nominee)、またはペーパーカンパニー(Conduit)ではなく、実際に所得の利益を受ける当事者(Beneficial Owner)である必要があります。 - 保有割合要件
租税条約(P3B)で定められた株式保有割合の閾値を満たすこと(例:25%以上) - 保有期間要件
株式を取得または保有する期間が、配当支払日を含めて最低365日間であること。
これらの規定により、たとえ外国納税者(WPLN)が実質的に実際に所得の利益を受ける当事者 (Beneficial Owner)であり、株式保有割合が閾値を超えていたとしても、保有割合の達成が短期間の急な株式取得による場合は、低税率適用の権利は無効となります。
配当剥ぎ取り(Dividend Stripping)対策第
20条の規定は、配当剥ぎ取りスキームを防止できるか?答えは「可能」です。実務上、配当剥ぎ取りは主に2つのパターンで行われます:
- 主体の操作(Subject Manipulation)
租税条約(P3B)適用上有利な権利を持つ企業に株式を移転するが経済的実体を伴わない。 - 期間の操作(Threshold Manipulation)
配当支払い前に、株式を追加取得し、租税条約(P3B)税率の閾値を満たす。
PMK112/2025は、これら2つのスキームに対して2つの主要な手段で対策しています:
- 受益者(BO)テスト:配当受領者が実質的に配当を受ける権利を有していることを確認するための第一のフィルター。
- 365日間の保有期間:短期的な株式保有操作を防止するための第二のフィルター。
このアプローチにより、実質要件または保有期間要件のいずれか一つでも満たされない場合、租税条約(P3B)に基づく低税率の適用は認められません。
ケーススタディ:税制影響シミュレーション
その影響を理解するため、以下に簡単な例を示します:
- インドネシア・X国間の租税条約(P3B)規定:
- 株式保有割合 25%未満:税率15%
- 株式保有割合 25%以上:税率10%
- 当初の状況
- 外国企業A社(WPLN)は、以前からインドネシアのPT Y社の株式を20%保有していました。
- 追加取引:
- 2025年1月1日、A社は追加で6%の株式を取得し、 合計保有割合は26%となりました。
- 配当支払:
- 2025年8月1日、PT Y社は配当を支払いました。
- 分析:
- 形式上は、配当支払時点で株式保有割合は26%(25%以上)となっています。
しかし、追加取得した6%の株式の保有期間は7か月であり、365日に満たしていません。そのため、保有期間要件が満たされていないため、A社は10%の税率を適用する権利を持ちません。 したがって、受け取る配当全額に対して15%の税率が適用されます。
- 形式上は、配当支払時点で株式保有割合は26%(25%以上)となっています。
監督およびコンプライアンスの仕組み
365日の保有期間(holding period)の規定は、税務当局が租税条約(P3B)の適用申請を検証する際に、より客観的な判断基準となります。監督は、以下の複数の仕組みによって行われます:
- DGTフォームにおける自己申告
DGTフォームには株式保有期間に関する特別な記載欄はありませんが、外国納税者(WPLN)が租税条約(P3B)に基づくより低い税率を申請する場合、365日間の保有期間 (Holding period)を含むすべての要件を遵守していると法的にみなされます。
もし申告内容が事実と異なる場合、税務調整や罰則のリスクが生じる可能性があります。 - AEOI(自動情報交換)に基づくリスク分析
自動的な金融情報交換(Automatic Exchange of Information/AEOI)の仕組みを通じて、税務総局(DJP)は配当を受け取る外国納税者(WPLN)のプロファイルを把握することが可能です。 - 税務監査における書類確認
税務調査では、定款変更、株主構成そして株主名簿(Share Register)の書類が確認対象となります。
これらの書類は、配当支払日から遡って365日間の期間で検証されます。
もしこの期間内に株式保有の大幅な変更が確認された場合、低税率適用の申請は修正される可能性があります。
源泉徴収義務者としてのインドネシア企業への影響
リスクは外国納税者だけでなく、配当を支払うインドネシア企業にも及びます。
インドネシア企業は、所得税h第26条(非居住者への源泉税)の源泉徴収義務者として、正確な源泉徴収に責任を負います。
もし後に、外国納税者が保有期間要件(Holding Period)を満たしていなかったことが判明し、既に低税率が適用されていた場合、インドネシア企業は、不足分の所得税第26条(非居住者への源泉税) の源泉徴収額の修正及び行政処分の対象となる可能性があります。
そのため、配当支払前に租税条約(P3B)低税率適用の妥当性を慎重に検証することが非常に重要です。
- 短期ポートフォリオ投資家
各国間の税率の差を利用することを目的として、短期間のうちに国境を越えて株式の売買を積極的に行う投資家。 - 積極的な税務プランニング
多国籍企業グループが、配当前にグループ内の株式保有構造を急に変更し、低税率国の企業へ配当を集中させるケース。
一方で、長期的に株式を保有する戦略的投資家や親会社への影響は比較的小さいと考えられます。
ただし、M&A(合併・買収)などの企業再編を計画している企業にとっては、今回の規則は新たな計画要素となります。
マネジメントは、買収後に低い配当税率(P3B)を適用するためには、最低1年間の保有期間(クーリングオフ期間)を考慮する必要があります。
したがって、PMK112/2025第20条の規定は単なる行政手続きの変更ではなく、実質(Substance)、保有割合(Quantity)、保有期間(Duration)の三つの柱に基づく租税回避防止の枠組みの強化を意味します。企業にとっては、これらの技術的要件を理解することが、コンプライアンスの維持と国際税務リスクの適切な管理において非常に重要です。(ASP)